感じたこと、思ったことノート

主観の瞬間的垂れ流し、混沌の整理、迷子の自分探し。井戸の底から雲の上まで。

形見

形見に頂いたペンダント。本人に貰ったわけじゃない。

当時どういう思考でそれをしたのか分からないけど、何か形として残るものが欲しくていてもたってもいられず遺族の方にお願いして、その人のお母さんが送ってくれたもの。

 

当時は色々とどん底だったから、自分が自分だったのか分からないくらいに記憶がなかったり曖昧なのだけど、多分訃報のメールをその人とやり取りしていたアドレスから頂いて、そこでお願いしたのかな。

手紙を添えて折角送っていただいたのに、お返事送ろうと思いながらも結局返せずじまいだった。

感情の荒波に堤防が決壊したかと思えば呆然と自分の外側から自分を眺めていたり、どうにもならない意識をお薬で落としたり、それはもう単細胞生物のような日々を過ごしていたので、お返事を送る気力がないくらい精神的に忙しかったというのは言い訳だろうか。その後は自らの常識の無さに自責ですよね。そろそろ時効ということで…

 

形見のペンダント、頂いといてあれなのだけど、見るのも辛くて10年以上仕舞いっぱなしだった。

でも今は少し違っていることに気付いて、昨日から眺めてみたり触れてみたり、握ってみたり、着けてみたりした。チェーンの輪っかを広げてみるとその中にあの人の首があったんだなって不思議な気持ちになる。

リボルバーの形をしていて、弾倉がちゃんと回る。何というか、このロックさがあの人に凄くぴったり。流石だなと思う。

ずっしりしていてくすんでいるから鉄か何かだと思ってたけど、よく見るとチェーンも銃も925のシルバーらしい。調べてみるとちゃんとしたメーカーの絶版のペンダントだっていうことが分かった。はめ込まれてる青い小さい石はサファイアだったらしい。

サファイアの青は好き。

 

感情。このペンダントを手にした時に湧き上がるのは、「クソ」とか「畜生」とか、あの人を連れて行ってしまった不条理に対するどうしようもないもの(自分にこういう感情があるのに驚く)。そしてあの人の理解されない苦しみや孤独に対する悲しみ、支えてもらうばかりで何もできなかったことに対する自責。

本当に暗く寒いところに居たのは分かってたのに。死のうと思って死んだんじゃないことも分かってる。

弱ったロウソクの火がふとした風に吹かれて消えてしまうのはよくある事だ。

 

アップダウンが強めなのに、周りを思って沈んだ自分を外に見せないような優しい人だったから、ついつい酒と向精神薬でODをしてしまっていた。もうしないと言っていたのに。

でも誰が責めることができよう?

冗談交じりに「ついまたやって吐いたまま意識失っちゃったよー」とかちゃらけて言うけれど、それは暗くて深い所、孤独の寒さに居たことの報告だった。僕とあの人が共有していたのはその部分だった。

そして事後報告しかしないのがあの人の姉御的な強さだった。最後は事後報告すらなかったけれど。

 

僕はあの人の死が自殺なのか、事故死なのか、他殺なのか、病死なのか、狂気なのか、被害なのか、脱落なのか、解放なのか、排除なのか、非業なのか、無念なのか、安らぎなのか、一生問い続けるのだろう。答えなど無いことは知りながら。

 

なんであの人は僕を生かして自分は死んでしまったんだろう。そこに意味があるなら残酷だし、意味も何もないのならただ無情だと思う。

 

なんて、前にも書いたようなことを書いてしまったけど、少し変化があることを書きたかった。

悲しみが薄れたとは思いたくないけれど、このペンダントを前よりもしっかり触れられるようになったことで、記憶の中に在るあの人との繋がり、そのほのかな温かさとか、時間の外側にあった一対一の空間に意識を置けるような気がする。

心強さ。心が何なのかわからないと言いながらも心強さを感じる。それはあの人が僕だけを見て接してくれたからだろう。

そこには単なるネットの友達でもないし、姉弟でもないし、親友でもないし、ただの傷の舐めあいでもないし、性や男女を意識するような関係でもない、あの人と僕の絶対的な関係があった。条件も比較もない繋がりの安心感。(そういった人と人の関係には僕は恵まれている気がする)

 

だから、何か大事な時はこのペンダントに頼ってみてもいいのかなと思った。もし僕がそれを頼んだなら、あの人はきっと優しく快諾してくれただろう。

お守りじゃないけど、なんて言うんだろう。直接身につけなくても、持っているだけでも煩わしさの外側を思い出させてくれる気がする。

 

それでね、ペンダント、くすんでいるから綺麗にしてあげたほうがいいのかな?って思ったけど、綺麗にしたらあの人が触れていた部分まで落ちてしまうような気がしてしまう。

有名人と握手したから手を洗わないっていうのと似てるって考えると笑えるけど。

 

ペンダントはピカピカになりたいのかな?それともあの人と触れていた時のままでいたいのかな?

 

僕も当時のあの人の年齢に近づいた。あの人がこのペンダントをつけて、浮き沈みに抗っていた年齢に。ペンダントは何を見たの?何よりもあの人を知っているはずなのに、ペンダントは何も教えてくれない。だから僕は今もペンダントを触ってる。