うちは鶏肉よりもガラや首、足ばかり買うのだけど、やはり大量飼育のブロイラーだけあって骨が軟らかい。僕が村で飼ってるニワトリなら足の骨は噛み切れっこないのに、このブロイラーは少し揚げただけなのに噛み切れてしまう。さすがに脛は噛み切れないけど、指は噛んで食べれてしまう。
トウモロコシ飼料ばかり食べさせられて、ろくに歩くことも知らず2カ月足らずで出荷される不自然に太った若鶏、これはニワトリなのだろうか。
抗生剤や飼料の遺伝子組み換えがどうのとか、成分とかそういった話は抜きにしても、やはり不自然だと思う。
作り出された不自然な多産種のトウモロコシを、不自然なくらい大規模の農場で、不自然なくらい薬品を使い、不自然な労働体形の労働者が働く工場で、不自然な加工をされ、不自然な距離を輸送され、不自然に安い飼料に加工される。
その不自然な飼料を餌に、不自然な早熟種のニワトリを、不自然に大規模で過密な養鶏場で、不自然な薬品を使い、不自然な労働体形の労働者が働く工場で、不自然な加工をされ、不自然な距離を輸送され、不自然に安い鶏肉になる。
中国産でもブラジル産でもアメリカ産でも大体こうだと認識しているのだけど、この先に繋がる僕自身もやはり不自然な都市生活の中で、不自然なスーパーマーケットで不自然に安くて骨の軟らかく味の薄い鶏肉を買い、料理して食べる。そしてこの頻度で動物性たんぱく質を取るのだから、過去数万年の中ではかなり不自然な食生活をしているのだと思う。しかも『定時で1日3回の規則的な食生活』という不自然な形で。
やはり僕自身もここで生活する限りは不自然の鎖の延長線に過ぎず、僕の先にまた無数の不自然な鎖をばらまいているのだろうなと思う。
それがいけないと言えばそれこそ億単位の人の生活を否定することになるし、僕はいけないとは言わないけれど、不自然だとは思う。
自然が良いか不自然が良いかは人によって捉え方が違っていいと思う。でも僕は自然が良いな。
鶏肉だけが不自然というわけではない。大体の農産物、畜産物はそうだろう。トウモロコシ飼料を食べて育った肉食魚が脂がのっていて美味しいと言われる良くわからない時代だ。じゃあもう自分たちがトウモロコシ飼料食べて脂のればいいじゃんとまで思ってしまう。ヴィーガンでも動物愛護でもないけど、不自然過ぎて嫌。数年前に観た『キング・コーン』の影響もあるのかな。
何もかも不自然で、食べるものも不自然で、僕自身も工業製品になっているような気がしてくる。実際そうなのかもしれないな。
人はどこまで傲慢になり得るのだろう。一神教の神に自然を超えた存在であることを許されたと思い込んで以来、不自然な存在になってしまった。
エデンの園は人間が気づかないだけで意外と身近にあるのかもしれない。
仙人になりたい。