タミル映画『2.0』を観た。SF作品『Enthiran』の続編で、主演はスーパースターRajinikanth(主人公役の彼は1人3役。実質4役!)。
邦題はロボット2.0だって。
インド映画というとヒンディばかりに焦点が当たりがちだけど、アクションと発想のぶっ飛び具合からいえばタミルも素晴らしい。
この映画も結構ぶっ飛んでる。そしてユーモアも挟むけど内容は真面目。どこかロマンチックであるし、どこか哲学的で、やっぱり歌と踊りのセンスはヒンディに負けず劣らず。この映画は作中でいきなり踊りが入るようなことはないのだけど、エンディングの踊りはとても良かった。幻想的。
僕の印象に一番残ったのは悪役だった。
ここからネタバレね!
生まれながら鳥に選ばれ、研究者として鳥とともに生きてきた初老のPakshi。研究を通じ携帯電話に使われる電波の鳥への影響、そして鳥が減ることの人間への影響を訴えるも、誰も耳を貸さない。それどころか自分の運営するバードサンクチュアリの近くに電波塔が立ち、その電波の影響(企業は法外な高周波を流していた)で生活を共にしてきた鳥たちも死んでしまう。
失意の中懸命に訴えるも伝わらず、電波塔で首を吊り自殺する。
その彼の身体から出た魂が死んでいった鳥たちの魂と融合し、携帯電話使用者=人類への怒りや憎悪を元に復讐のモンスターと化す。
その融合するシーンで僕は凄く安堵したし、嬉しかったし、泣いた。
陰鬱としたシーンの連続から彼が怒りの化身になる間に一瞬見える救い。素晴らしい描写だと思った。
鳥に選ばれ、鳥とともに生きた人の喪失と失意、それが自殺に繋がるわけだけど、彼は死の先でその鳥たちのもとに帰れた。魂となって溶け合い、それまで以上の繋がりの状態に帰ることが出来たし、そこで人生、そして苦しみに意味が付いた。それ以上の救いってないと思う。
彼は主人公たちに負けちゃうんだけど、憎悪の化身であるからそれはそれでよかったのだろう。僕は、彼はそれ以前の段階で救われていたと思うから、その憎悪は負けることでしか止まらないものだとも思う。
エンディングでは人類の無配慮が続けばこの惨事は再び起こるだろうという視点で、電波使用は法によって抑制することが必要だと主人公と大臣が合意するシーンもあった。投げっぱなしにせず人類側の反省に繋がることで、物語の中の悲惨さが無駄に終わらないのも良かった。
現実でも技術競争は続く。
5G、これも鳥が死んだという話もあるからここから着想したのかな。そこまでのものが必要かどうかってこともそうだけど、例えば人が文字を得てから記憶力を失ったと言われるように、僕は何か失う部分があるのではないだろうかと考えてしまう。急速であればあるほど、人の認識能力を超えていれば超えているほどに。
便利になればなるほど余裕を失うと感じるように。
色々考えさせられる部分でもある。
トレイラー貼っとくね!
2.0 - Official Trailer [Tamil] | Rajinikanth | Akshay Kumar | A R Rahman | Shankar | Subaskaran
歌とダンスも貼っとくね!
Endhira Logathu Sundariye (Video Song) - 2.0 [Tamil] | Rajinikanth | Shankar | A.R. Rahman
前作からの主人公の一人、ロボットのChittiが見る未来なのかなって思うと感慨深い。沢山の仲間とともにロボットダンス。人間はまだいるのだろうか。