今月は孤独月間になりそう。慣れ親しんだ孤独、Solitudeな方向にもっていけば辛さは少ないと思うんだけど、寒さや孤独感、Loneliness的な部分に何かあると思うと今無理やりそっちに持っていくのはなんかこう、開き直りな気がしてしまう。大体こういう時は必要なものがその感覚の中にあって、しっかり感じて内側に何があるのか見つけておかないと同じことを繰り返す。
そういう意味で今は孤独感やその周りにある感覚に浸からなきゃいけないような気がしていて、その感覚に合うプレイリストを作った。やっぱり昭乃さんが凄い。他の好きなアーティストだとこういう気分の時はこの人のこの曲が合うって感じだけど、昭乃さんは僕がどんな気分の時でも合う曲が見つかる。
この曲
昭乃さんの"Another Planet"っていうコンピレーションアルバムに入ってて、一曲だけならこのItunes storeのZABADAKの"IKON~遠い旅の記憶~"っていうアルバムからも買える。
歌:新居昭乃
作詞:新居昭乃
作曲:吉良知彦
針金でつくる
入り組んだお城を
テーブルの上の
中庭に日が射す
夏の部屋 夜明けの部屋
いいことだけを飾るの
ひとりひとり閉じこもる
子供の頃の私が
笑うこと しゃべること
棚の奥 しまい込んで
誰にも見られずに
眠るの 鍵をして
入り口 守る人
知っている 誰なの?
剣を向けている
この世界すべてに
からだ中を傷つける
針金 永遠の罠
自分の手でつくったの
外に開くドアはない
考えること 思うこと
もうやめてもいい?
お願い
静かな絶望に
ただ ただ耐えるの
誰にも見られずに
眠るの 鍵をして
遠い目をした子供みたいな昭乃さんの歌い方も平坦なメロディもすごくて(語彙不足)リピートが止まらなくなる。ただ横たわって天井の向こう側を眺めながらずっと聴いていたい曲。
何よりすごいのは歌詞で、一言一句全部自分が持ち合わせてる感覚になって、情景が浮かぶどころか自分の中で再体験してる感覚になる。
城。僕は要塞とよく書いてたと思うけど、僕も自分の中で持ってるもの。中に色んな自分が住んでて、でも誰が住んでいるのか自分は知らなくて、記憶を仕舞った場所や物の置き方が勝手に変わってるから誰かが住んでるのは分かる。中には入れるけど、僕が入れるのは2つの広間だけで、基本は浮かぶそれを眺めるだけ。多分、僕はこの曲で言えば「入り口守る人」でしかない。この歌の主の視点っていうのが僕から剥がれ落ちてしまったものだから。聴いているとそれがどこかで満たされるんだと思う。
なんだろう。インナーチャイルドっていう言葉もあるけど、どっちかというと僕が反応してるのは解離的な部分な気がしてる。その辺は聴く人にもよるのだろうけど。
この曲を聴いてて思うのは、当たり前だけど、彼らも人格なら気持ちや思いがあるんだよね。自分の意思で閉じこもってるのか、出て来られなくなってしまっているのか、それは分からない。多分本人にも分かってない。ただそうなってしまった。そうするしかなかった。必要なことだった。でも同時に、永遠の罠っていうのもよく分かる。自由に出入りできる熟練したバウンダリーみたいなものなら良いのだろうけど、それとは全然性質が違うから意識せざるをえなくなる。自分の中に得体の知れないものが入った、大きなブラックボックスを抱えてるようなもの。変化の中それが互いに苦しいし、苦しい理由もその中にあるからどうしようもない。
それでね、昭乃さんの"ツバメ"って言うアルバムがあって、そこにもう一つ城がテーマの曲、”氷の城”が入ってて、これも今回のプレイリストに入ったのだけど、これもまた別の方向に破壊力が凄かった。今までは何故かあんまりちゃんと聴けてなかった曲。
とても寂しい時に聴いてたからなのか、油断していたからなのか、泣いたと言っていいくらい涙が出た。枕が濡れるくらいに。でも泣くってこんな感覚じゃなかった気がして、はっきり泣けた!とは言えないのだけど。この前もあったのだけど、ただただ涙が滴ってくる感じ。これって泣いたの?わからない。でもこの量は多分15年以上ぶり。
こっちはその城の居心地の良さを認めてくれながら、そこから出ることを促してくれるような内容。綺麗なメロディも浄化してくれるよう。
歌:新居昭乃
作詞:新居昭乃
作曲:新居昭乃
夜明けに積もる雪 並んだ窓の街
ニードルレースの模様のように
あなたは目をさまし ドアを押し開ける
世界にたったひとりきりのように
優しい夢があなたをつつむ
やがて溶けてなくなる
砕けてただ壊れる
氷のお城は居心地がいいの?
なぜ…
荊の椅子だけがあなたを守る
空を駆けるオーロラを待つ
そこは風も吹かない
寒くて淋しい場所
何を見てるの? ガラスの目の奥で
こんなに近くにいて
たどり着けないその手を
弱い光があたためる
今すこし笑ったの?
溶けてなくなる
砕けてただ壊れる
氷のお城を抜け出して
さぁ行きましょう
「砕けてただ壊れる」ってとても救いを感じる。
壊れなければどうしようもないけれど、どうしても壊せないから壊れてくれればって思うんだよね。それが自然に訪れるならそれは希望。
弱い光っていう言葉選びもすごいなって思う。それが針金であれ氷であれ、自分の中の城、そしてその中に居る自分を知っている人の言葉選び。
アルバムのページに曲解説が書いてあって、やっぱりそうなんだなぁと思った。そういう思いを込めて作った曲で、実際にそう感じさせてしまうのだから魔法みたいって思う。そんな思いに触れたら、柄にもなくお礼のファンレターでも書いてみようかなと思った。込めてもらったものを受け取ったこと、そしてその気持ちは伝えたいと思った。
”氷の城”はツバメの時の新曲だったと思うから、上の”城”からは20年くらい経ってると思う。その歳月を経ての繋がりや変化を感じさせてくれるところもいいなって思う。昭乃さんは僕にとっては先を行って行き先を教えてくれるような人であり、僕がどうある時もそれでいいんだよと包んでくれるような人。
最初にLonelinessとSolitudeって書いたけど、これはクオートなんか見ててもよく出てくる分け方。そして大概が「Lonelinessはまやかしです、孤独を受け入れSolitudeを楽しみましょう」って感じ。
言いたいことは分かる。僕の場合、ここまで『僕にとって』を深める前はそれでも良かった。でも果たしてそうだろうかっていう部分が一つの引っ掛かりだと思う。
大概こういう一見強く見える突き抜けた捉え方って、自分が強く生きたいがためのものであって、言い換えれば自分の弱さから目を逸らすためのものだと思う。だから自分に言い聞かせるように聞こえるし、そこにある正しさ(と思っているもの)を他人に投射するのだと思う。全てがそうとは言わないけれど、そういう人が多い。
勿論その理屈が合う人ならいいのだけど、自分に合わないならこういうのも捉え直していかないと縛られっぱなしになる。
僕は、人の感覚に必要ないものはないし、遠ざけるのも違うと思う。確かにSolitudeは心地良さが勝るけど、Loneliness的な孤独感もそれはそれで生むものがある。何より、自らのLonelinessから目を逸らすためのSolitudeであるのなら、それは一部しか見ていないのではないだろうか。本来水と油ではない筈の2つの概念がそう見えるというのは、水と油的な考え方の人の手垢が染み込んでいるということだろう。隠遁志望の僕にとってはそんなSolitudeならlimiting belief以外の何物にもならないと思う。ハーモニーの欠如。
なんてことを、昭乃さんの歌を聴きながら書いてたら出てきた。ということはそうなんだと思う。弱さでもいいんだと思う。受け容れた先の世界が見たい。
ある意味、当たり前になり過ぎていて孤独感にしっかり目を向けてこなかったから、そして以前なら見つめようともしなかっただろうから、今になってそういうタイミングが回ってきたんだと思う。
プレイリストコピーしたからお裾分け。Spotifyあんまり使わないんだけど。
城はないけど、氷の城は入ってるよ!
結構渾身の曲順。