義弟が詐欺に遭った。こっちの人は耐性がないからね。
彼が持ってる古いコインに国外で数万ドルの値がついたってコインブローカーを名乗る人からメッセージが来る。その後購入希望者とそのブローカーのメッセージのやりとりがグループチャットでされ、入金したいけどバンクアカウントのアップグレードしないとその額の国外送金は出来ない、丁度お金がないから日本円で2万5千円くらい貸してってやつ。その分も後で返すと。
SNSで古いコインをあげたりそういうグループに入ると来るらしい。前に同僚も同じのに引っかかりそうになってたから知ってた。
いくらなんでも設定に無理ありすぎだし、すっごいわざとらしいメッセージのやり取りだなって思うんだけど、大金がもうすぐ手に入るって思わされるとさした額じゃないって思って払っちゃうのだろうね。平均給料の半分よりちょっと高いくらいの額っていうのもポイントなんだろうな。
それと頭を冷やす時間を与えないようにとにかく急かす。僕なら急かされると「やーだよ!」ってなっちゃうけど、カッとなるタイプがターゲットになってるのだろう。Googleで調べればすぐわかるはずなのに、それも出来なくなる。
それにしてもそれっぽっちの金も用意できない人間がコインにそんな大金を払うかよって思った。
それだけしっかり心理面のスクリプト練るならもうちょっと芝居を詰めたり、添付画像凝ったものにすればいいのになって思うけど、そうするまでもないのだろう。模倣犯かもしれないしね。
そのお金が手に入ると思うと止まらなくなる人はいる。内容は別でも利用してる心理が同じような詐欺は日本でも結構ある。
義弟も止まらなかった。サラ金で借りるという強い意志を持っていたのでどうしようと妻から相談があり、貸してあげることにした。
勿論詐欺だって知ってることは妻を通して伝えたけど、「そこまで大きな額じゃないから試してダメならそれでいい」って。そう思い込まされちゃうんだよね。こっちの所得や物価からすれば十二分に大した額なんだけど。
こういうのは払ったら払ったで追加で際限なく要求される。ギャンブルみたい。ここでやめたらもう手に入らない。さっき手元から相手に移った金も消えて損になるって。
これってすごいプレッシャーなんだと思う。取り戻そうと思った時点で相手の手中にあるのに、損しか見えなくなってしまう。怖い。
カジノのゲームやったことあるけど現金では絶対できないと思う。僕は誰より騙されやすいから、近づかないことでしか身を守れない。ギャンブルも薬も宗教もそういう感覚がある。チキン!
サラ金で借りるのは家族みんなの問題になるし、絶対返すという確約のもと貸してあげた。
本当なら無理にでも止めるべきところなのかもしれないけど、それで恨まれても嫌だし、彼はまだ独身だし、いいかなって。
妻も性格は僕と似てる(事なかれ主義で個人主義的)ので、残念ながら止めてやる人は居なかった。
結局のところお金を貸す側の僕にとっては彼が何に使うかは関係がないと思っていて、貸す時はお金が返ってくるかどうかだけを考えることにしてる。ただでさえお金苦手だから色々面倒なんだもん。この場合彼は損をしても返す子だから僕は貸した。
騙されるのは可哀想だけど、レッスンと思ってもらうしかない。こういうのは早いうちに、大したことないものに引っかかってしまった方がいいのかもしれないし。
なんて思って貸したんだけど、今さっき帰ってきた彼は取り繕っていても落ち込んでいる。なんか可哀想になってしまった。情が移りそう!でもダメ!
無理にでも止めてあげるべきだったのかな。うーん…
この空気すごく苦手。茶化してあげればいいのか慰めてあげればいいのかわからないし、目も合わせづらい。こっちが動揺してるのがバレるのが怖いのかな。必死に違う話を振る。無口な人間が急にお話し振るようになるっておかしいね!どうしたらいいのかわかんにゃい。
なんで僕が動揺してるんだよって話ですが…意志が弱いなぁ。
あの後やっぱり追加で日本円にして約3万円要求されたんだって。教科書通りすぎない?
そうなったら絶対詐欺だからねって前もって伝えておいたのは良かった。
そして覚えといてくれて良かった。サラ金で借りたりせずドロップアウトした彼の勇気は心の中で讃えておこう。
まぁ、気持ちが揺れても返してもらうことは撤回しちゃダメだよね。お互いにとって良くない。流されるな…約束は絶対です…
お金が返ってきたら何か奢ってあげよう。