感じたこと、思ったことノート

主観の瞬間的垂れ流し、混沌の整理、迷子の自分探し。井戸の底から雲の上まで。

手 実感と断片 リストカット

気がつくと手を眺めている。何度見つめても不思議。

角度を変えても、動かしてみても、触れてみても、自分のものという実感がない。

 

思うように動くのだけど、動かしているのが自分なのかが分からない。

いや、思うように動いてるのだろうか?

勝手に動いているものに自分が動かしていると錯覚しているだけな気もしてくる。

 

意識も同じ。

本当に自分が意識しているのかが分からない時がある。勝手に動作しているものを意識していると思い込んでいるだけではないか。

 

次第に分からなくなってくる。

自分が起きているのか、寝ているのか、現実なのか、頭の中なのか。

 

感じるという行為は確かに自分の線を確認させてくれる。

 

でもこの目の前の石を見ているのは本当に僕なのか。

今石を触っているのが僕なのだろうか。

それとも触った石を冷たいと感じているのが僕なのだろうか。

そう感じる自分を眺めているのが僕なのだろうか。

それを不思議に思っているのが僕なのだろうか。

 

全て部分的で断片的。

だから自分というものを見失う。

 

そもそも自分とはなんなんだろう。

僕とは?

僕と呼ばれる存在が僕なのか。

これを考えている今の意識が僕なのか。

僕の内側の断片が一つ一つ僕なのか。

その複合が僕なのか。

 

実感がないものは事実だと感じられない。僕の存在そのものがそう。

生きている実感がないことが多い。人の多いところにいると特にそう。

 

実感があるのは断片だけど、ではどの断片が僕なのだろう。全てだと言われると振り出しに戻ってしまう。

繋がっている実感がないから。

脈動する心臓も、魚から取り出した動く心臓と何が違うのだろう。

今見ている景色も、テレビなんかの映像と何が違うのか。

頭の中の記憶は本当に僕の物なのか。

まとまりのない色んな断片が主張する。

胸の中につっかえ、巨大化した寄生虫のように蠢く、冷たい孤独感だけがいつも僕を待っている。

 

でもいつもこんなにバラバラという訳でもない。

静寂の中では全てが統一されまとまる。

自然の中では。安堵感の中では。

 

別に落ち込んでる訳でも沈んでる訳でもないのだけど、ただ、迷子になってしまう。

天の川を眺めているのに天の川銀河の中に居るんだと言われても、頭では分かっても実感できない。

 

あ、痛みの中でも自分の線が確定する。

その瞬間はスッと喧騒が消えるから。痛みの中に静寂が見える気がする。

 

やったことないから分からないけど、リストカットする人の中にはそれを求める人もいると思う。血を見て生を実感するのも分かる。

だからリストカットしてる子にするなとは言えなかった。昔の話。

 

彼らはおかしいからそれをするのではなく、おかしな状況下で自分を保つ為にそれをするんだと思う。必要があるから。

その青紫の傷の数だけ苦しんで、その数より少ない一瞬の静寂を見つけたんだろう。

バラバラなのも孤独なのも辛いからね。

 

勿論そんな単純じゃないとは思う。

人によっては見て欲しさ、気づいて欲しさがより強かったり、陶酔感や死の香りへの憧れもあると思う。でもそれらも同じ苦しみなのだから、他人が分ける必要もないのかもしれない。

 

 

酒が鎮静剤として飲まれている世界。

セックスが楽しむためではなく自分を保つ道具になる世界。

ストレス反応を薬で抑えてストレスの中生活する世界。

 

そんな中で自分の腕に傷を付ける子を見て、誰が代替案を提示できるの?

10代にして髪の毛が抜け落ちてしまう子を見て、なんと声をかけてあげればいいの?

10年以上経ったのにまだ分からない。

 

辛いものを見過ごせないからって、救ってあげることができないなら触れないであげたほうが良かったのかもしれない。

 

あの子の依存が怖くなって逃げてしまった後、街中でばったり再会したあの子はすっかり変わっていた。

明るく振舞い、楽しそうに100人とセックスしたと言っていた。

 

それが救いと分かるなら良い。

でもそれを辛さを埋める為にしてると知ってる僕がそれを聞いたら、100人の他人と交差した時間の分、いやそれ以上に苦しんだとしか感じられない。どう反応しろというの?

どんなに明るく振舞っていても、隠していても脱毛が増えているのはわかった。腕の傷も。

 

見捨てた僕がそう感じると知ってて伝えてきたのだろうか。そんな子じゃないのは知ってるはずなのに。

見捨ててしまった僕は、1人目の僕として、その100人の分もずっと背負わなければいけないのに。

 

 

生きていてくれてるかな。

救いはあったのかな。

 

なんでこんなこと思い出したんだろう。

今日のは膿が混じったな。

 

書きながら何回手を眺めたか分からない。本当に僕の手なのかな。